<アイランダーサミット石垣2021>COP26も交えた熱いエネルギー議論を島から発信

 2日間に亘り、石垣島のフサキビーチリゾートホテル&ヴィラズを拠点に開催されたプロボノ型のアイランダーサミット石垣2021。今回は2日目に行われた、エネルギーに関するセッションについてレポートします。

〜自然と共生するエネルギーを考える〜

 このセッションでは、王立国際問題研究所の玉木直季氏がファシリテーターとなり、資源エネルギー庁 早田豪氏、シュナイダーエレクトリック 青柳亮子氏、自然電力 磯野謙氏、JX石油開発 古館恒介氏、西表島エコツーリズム協会 徳岡晴美氏で議論を進めました。
 COP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議/the United Nations Framework Convention on Climate Change)が1週間前まで開催されていたこともあり、パネリストから日本政府のアジアにおけるエネルギートランジションの取組みが紹介され、オンライン参加者から海外では評価されているかと問いかけがありました。パネリストによると、同取組みは評価をされているが、例えばデンマークは既に95%が再生可能エネルギーであり、得意とする太陽光や風力での途上国支援を行おうとしているように、各国が各地域にアプローチし支援している段階とのこと。1.5℃目標の意識がこれまでよりも高まったことや他国間の排出量取引制度のルールが合意できたこと等、COP26の成果があったとのコメントもパネリストから出されました。
 合わせてCOP26では全体合意ができないものについては有志国間で宣言やアライアンスが多数出されていたことや、100%ゼロエミッション自動車宣言ではイギリスが24ヶ国と実施したが、自動車生産国であるアメリカ・ドイツ・フランス・日本・韓国・中国は枠組みに入らなかった例を挙げながら、先進国が気候変動という土俵の中で国益を守り自国産業を育てながら、経済としてどう生き残るかを戦略的に選択している様子も触れられました。


 また、パネリストからは気候変動への取組みやエネルギーと資源の最適化だけでなく、エネルギーを効率的に使う重要性について指摘がありました。暖房や空調、照明等をオートメーションとデジタルにより自動的に調整することでエネルギーの使用量を削減、CO2削減につなげる等、まだ改善の余地があるのではないかとのことでした。
 エネルギーの循環はどうあるべきか、その開発は誰が担うべきかについてもモデレーターから投げ掛けがありましたが、エネルギーの最大のパラダイムシフトは偏在する資源を奪い合うことから自然の力を電気に変えられるようになった点、太陽光は簡易な技術で電気を生み出せるようになり、多くの人が電力生産に参加できるようになった点が挙げられました。2011年以降、日本では太陽光の出力は70ギガワットに及び、これは原子力発電10基分にも相当するそうです。
 そして再生可能エネルギーを導入するだけでは自然を収奪することに繋がる可能性があるとの指摘もなされました。人が生活し活動する中でいかにエネルギーを大量消費しているかを認識し、エネルギー消費を自制するかを意識しなければ、収奪の対象が化石燃料から自然エネルギーに変わるだけであり、自然環境と調和するという考えに基づきゴールを探す必要性や、日本の省エネ技術にプラスして省エネの背景にある自然に対する畏敬の念、「もったいない精神」も同時に発信する重要性も提起されました。
 最後にパネリストから本セッションを踏まえ、西表島での島内発電やイリオモテヤマネコ保護のために速度制限がなされた電気自動車の導入に関するアイディアと、これについて住民側からアプローチできることがあると感じた、目指すべき姿から過程を考えて検討する重要性を感じた、先述したエネルギーのパラダイムシフトに加えて蓄電池で輸送が可能になると世界は変わるのではないか、再生可能エネルギーはより浸透すると思われ、マイクログリッドを活用してエネルギーの地産地消が増えるのでは、という意見が出され、セッションを締め括りました。

 日本ではなかなか報道されないCOP26の裏側や、エネルギーの効率的な使用といった目からウロコの発想等、もっと聞いていたい議論が繰り広げられ、自分にもできる「スモールチェンジ」があるように感じられました。


アイランダーサミット石垣2021: http://islander-summit.world/2021.html

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