<帝国ホテル>環境配慮は社会から期待される新たなおもてなし:全社で推進する10の取組み

 帝国ホテルの食に関するサステイナビリティに関しては「<帝国ホテル>創意工夫で食材を使い切る、5つの取組み」に掲載しておりますが、今回は環境の視点で取組みをご紹介いたします。

①「ホテル・旅館基準」のエコマーク認証取得

 帝国ホテルでは2016年に4つの直営ホテル(帝国ホテル東京、帝国ホテル大阪、上高地帝国ホテル、ザ・クレストホテル柏)でエコマーク認定を取得しています。ホテルグループとしてエコマークを取得したのは国内初です。合わせて、快適性・安全性・利便性の追求と環境配慮を高いレベルで両立しようとする姿勢が評価され、「エコマークアワード2016」の最高位である金賞も受賞しています。

〜エコマークとは〜

 エコマークは、公益財団法人日本環境協会により、国際標準化機構の規格ISO14020(環境ラベルおよび宣言・一般原則)およびISO14024(環境ラベルおよび宣言・タイプⅠ環境ラベル表示・原則および手続き)に則って運営・認定される、日本で唯一のタイプI環境ラベルです。様々な商品(製品およびサービス)の中で、「生産」から「廃棄」にわたるライフサイクル全体を通して環境への負荷が少なく、環境保全に役立つと認められた商品が認定され、文房具や制服の他、建築資材、土木製品、エンジンオイル、スーパーマケット、ホテル等があります。消費者が環境を意識した商品選択を行ったり、関係企業の環境改善努力を進めていくことにより、持続可能な社会の形成をはかっていくことを目的としています。
 エコマークでは、「資源採取」「製造」「流通」「使用消費」「リサイクル」「廃棄」の商品のライフステージの各段階において、主に「省資源と資源循環」「地球温暖化の防止」「有害物質の制限とコントロール」「生物多様性の保全」の領域において環境への影響を総合的に判断しています。

画像提供:公益財団法人日本環境協会 エコマーク事務局


② 屋上緑化と太陽光発電

 2002年4月に帝国ホテル東京 本館屋上にて太陽光発電施設を伴った屋上緑化を既存の高層建築物としては初めて行いました。屋上緑化は表面温度の上昇を抑制し、直下階の室温が2〜3℃下がることによる省エネルギー効果が期待できる他、ヒートアイランド現象の緩和、大気汚染の浄化、雨水の流出抑制に効果を発揮します。夜間は太陽光発電をライトアップに利用しています。

帝国ホテル東京 本館屋上の太陽光発電施設  出典「帝国ホテルサステナビリティレポート2021」

③ グリーン電力の積極利用・提案

 帝国ホテル東京・大阪では2005年よりクリスマスイルミネーションの電力に水力や風力等自然エネルギーを使用し発電されたグリーン電力を購入して使用しています。また、2012年からはホテルが主催する様々なイベントもグリーン電力化、2014年からは帝国ホテル東京の宴会場でイベントを主催するお客様にグリーン電力の案内を開始し、簡単な手続きで利用・証書の購入ができるようになっています。

グリーン電力証書  出典「帝国ホテルサステナビリティレポート2021」


④ 電気自動車充電スタンドの設置

 帝国ホテル東京では、経済産業省「次世代自動車充電インフラ設備促進事業」に基づき、電気自動車の急速充電スタンドを設置しています。急速充電スタンドは電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド自動車(PHV)でご利用いただくことができ、15分~30分で80%充電することができ、2020年度は617台の利用がありました。
 2015年度4月からは、この電気自動車充電スタンドで使用する電力を、すべてグリーン電力でまかない、充電用電力を発電する際のCO2排出量をゼロに抑え、環境負荷の低減に貢献しています。

ホテルに設置している電気自動車の充電スタンド
出典「帝国ホテルサステナビリティレポート2021」


⑤ 環境に配慮したコーヒーの提供

 日本のホテルで初めて、レインフォレスト・アライアンス認証を取得したコーヒーの取扱いを開始しました。これは、森林保全や農家の労働環境が健全であることを示す認証で、一部のレストランで提供されている他、MICE開催時のコーヒーブレイク等でも選択が可能です。

⑥ ゴミ分別の徹底

 約20種類のゴミ分別を行い、資源化やリサイクル化の促進を図っています。例えばレストランや宴会場で使用した紙パックや使用済みの紙製コースター等を紙のリサイクルを行うパートナー企業に提供、これらを原料としたトイレットペーパーやペーパータオルを購入し循環型リサイクルを実現したり、スリッパや歯ブラシ、ヘアブラシ等の使用済みアメニティもパートナー企業との協働により、粉砕・加工され、固形燃料にリサイクルしています。
 また、ホテルから排出されるゴミだけではなく、タワー・本館に入居されているオフィステナント各社にも協力を仰ぎ、分別の促進に努めています。自社だけでなく、様々なステークホルダーの理解を得ることは簡単ではありませんが、丁寧な説明を継続し、客室や宴会場から排出されるゴミと比較しリサイクル可能な紙類の比率が高いオフィスゴミを分別・回収方法の工夫により、資源へ転換する効果を生んでいます。

ホテルスタッフが手作業でゴミを分別  出典「帝国ホテルサステナビリティレポート2021」


⑦ 使い捨てプラスチック対策

 全事業所の直営レストランにおいて、ドリンクにはストローを付けず、お客様の要望がある際に紙製ストローを提供しています。これにより、プラスチック・紙双方のゴミ削減に努める他、帝国ホテル東京、大阪、上高地のホテルショップにおけるプラスチック製手提げ袋は廃止するとともに、惣菜等のプラスチック製容器も他素材への切替えを予定しています。

⑧ 水のリサイクル(中水)

 帝国ホテル東京のタワー客室では、1983年竣工時より、バスルームや洗面で使用された水道水をホテル内でろ過・殺菌し、タワー館のオフィス、パブリック、従業員のトイレ洗浄水として再利用されています。この浄化システムにより、リサイクルできる水の量は1日平均で約320トンにも上り、年間でホテル全体の使用量26日の節水効果があります。大阪ではパートナー企業で客室排水を処理し、リサイクル後にホテルのトイレ洗浄水に利用しています。

⑨ 館内照明のLED化

 2008年に国内電気メーカーと共同でホテル内のダウンライトに使用するLED電球を開発、光がお客様の目に眩しくなく、かつ電力消費量を従来製品の7分の1まで減らしています。さらに館内の電力削減を目的に電気使用量を従来の約15%まで減らすことのできるLED化を進めています。

⑩ SDGs eラーニング実施

 従業員へのSDGs浸透を図るため、eラーニングを実施し、帝国ホテルグループ全従業員約2,800名が受講しています。この他にも活動状況や成果等を「サステナビリティ推進委員会」の各分科会スタッフが中心となりポスターを制作・見える化に努め、従業員やパートナー企業のSDGsや環境活動への興味・理解を深める取組みも継続しています。

 帝国ホテルでは、中水利用等ホテル創業時から続く取組みから徐々に範囲を広げ、社員で行うものだけではなく、テナント企業やパートナー企業の協力を得ながら推進する取組みまで展開されています。これらホテルの取組み周知が進むにつれ、MICE案件の企画時点で提案事業者から相談が寄せられる案件も出ており、今後、サステイナブルな取組みが自社の強みになる事例が増えるものと思われます。

帝国ホテルでは、エネルギー使用量や生ごみ発生量等を計測し数値把握、見える化している
出典「帝国ホテルサステナビリティレポート2021」

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