<アイランダーサミット石垣2021>価値観やモノサシが変わる、グレートリセットの時代

 今年3回目の開催となるアイランダーサミット石垣2021が11月18日(木)〜19日(金)に「人間性への回帰 – ヒューマン・グレートリセット」をテーマに5つのトピックスでオンラインにて開催されました。配信拠点となったのは、石垣島のフサキビーチリゾートホテル&ヴィラズ。計36名の登壇者が現地及びオンラインで参加し、議論の様子をYou Tubeにて配信しました。
 アイランダーサミットは、毎年社会的課題を取上げ、自分ごと化してもらうきっかけ作りのために実施されています。総合プロデューサーの渡邉賢一氏は開会の挨拶で「COP26や世界経済フォーラム等でグレートリセット、これからの世の中について話し合われ、政治や経済の物差しが変わり価値観のシフトが起きる可能性がある。地球を1つの『島』と捉えた際に島目線で何を考え、一人一人ができることは何なのか。私達のゴールは『スモールチェンジ』。参加者それぞれが、繋がることへの意味を確かめ合い、社会を好転させるための「自分ごと化」のきっかけを生み出していこう」と呼び掛けました。

〜オランダの環境・文化保全事例〜

 基調講演ではオランダ王国大使館 広報・政治・文化部のバス・ヴァルクス氏がオランダ国内の事例としてアルバ、ワッデン海の取組みを紹介しました。
 オランダ王国の構成国であるカリブ海に浮かぶアルバ島では、「FUTURAアルバ・イノベーション・ラボ」が島を持続可能なソリューションのための実験室として活用し、人々・地球・コミュニティのためにより良い持続可能な未来を創造することを目的に活動しています。同組織が2017年から始めた「プラスチック・ビーチ・パーティ」プロジェクトは、海岸に流れ着くプラスチックゴミを回収し、選別・精製・破砕・デザイン・形成を行った上で製品に変え、ホテルや消費者に販売しています。プラスチック破砕には自由に流用できるオープンソースの技術を基に設計されたシンプルな機械を使用し、これまでに1万kg以上のプラスチックゴミを回収し、2,500種類の製品を製造してきました。オンラインショップも運営しています。

プラスチック・ビーチ・パーティの活動の様子
オープンソースの技術を基にシンプルな機械で回収したプラスチックゴミを破砕、形成


 地質学的・生態学的なユニークさから2009年にユネスコ世界遺産に登録されたワッデン海エリアの説明もありました。主要産業は観光で、1982年からビーチや海・森を会場に実施されOerolという文化イベントが毎年実施されています。また、星空ツアーや焚き火での生活等ができる暗闇体験イベント、地元食材を活用し各島の個性的な料理を食べたり食材生産者を訪問するガストロノミーイベント等もあり、ワッデン諸島の文化を体感できる場が提供されています。
 グレートリセットとは、人間の視点を変えること。持続可能な未来を築くためのビルディングブロックは個々に託されており、皆でアイディアを出し合い、次世代のより良い未来のために、語り合おうとバス・ヴァルクス氏は投げ掛けました。


〜未来のモノサシ -島目線で考えるヒューマン・グレートリセット- 〜

 基調講演後にデンマーク ロラン島 ニールセン北村朋子氏やインドネシア バリ島 サプトラ・スリウィジャヤ氏、石垣市 小切間元樹氏、UNWTO駐日事務所 夏秋智行氏、予防医学研究者 石川善樹氏も加わり、パネルディスカッションを行いました。経済資本主義だけでなく、心のあり方や自然とどう共生するか等、コロナ禍で「モノサシ」が変わったのではないか、というモデレーター・渡邉賢一氏の投げ掛けに対し、ロラン島ではコロナ禍であっても生活様式がほぼ変わらなかったことに着目した都市部からの移住者が増加したり、国のエネルギー政策で2030年までに二酸化炭素排出量を1990年比で70%削減するとしているものの風力発電等のエネルギーだけでは達成が難しく、酪農・畜産が基幹産業ではあるが生産エネルギーの高い肉の消費から植物由来の食へシフトする動き、若年層の23%がベジタリアンであることが紹介されました。オランダでもビーガンやベジタリアンが注目されていて、肉類を毎日は摂取しない人が3人中2人おり、代替肉への関心も高まっているとのことでした。また、ウェルビーイングの観点では、160ヶ国での調査に基づき、料理頻度の男女格差が小さい国ほどウェルビーイング度が高いという結果や、料理過程で食材のサステイナビリティを学べ、男性がより料理に参画することでジェンダーダイバーシティ推進にもなり、ウェルビーイングに寄与するという考え方が示されました。
 オンラインでのMICE実施をはじめDX(デジタル・トランスフォーメーション)が進み、人間の五感が置き換わる中で、味覚や人と会うという部分は置き換わりにくく、価値が増すのではないかという意見も出されました。同時にデジタル化が進み、置き換わる真っ只中を体験している大人世代はどちらが良いかを比較することができるが、デジタルネイティブ世代は子供の頃からデジタルであるため、何を基準とするかは考えるべき視点という話題も提供されました。
 DXで置き換えることのできない「体験」は重要であり、文化とテクノロジーは当事者意識と主体性を持って選択し進んでいくことが成長にも繋がり大切だ、と初日の議論を締め括りました。

 2030年、2050年と将来のことを話す際に、その時に中心となっている将来世代と共に議論を進める必要性も語られ、様々な意見が出された初日のセッションでした。

セッション初日。石垣島およびオンライン参加のハイブリットで議論を進めた

アイランダーサミット石垣2021:http://islander-summit.world/2021.html
会場:フサキビーチリゾートホテル&ヴィラズ https://www.fusaki.com/


 

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