<11/10オンラインセミナー>MICEにおけるオープンエアの再発見概要レポート

 11/10(水)19:00〜20:30、日本バルコニスト協会代表理事、MPI Japan Chapter名誉会長であり、日本のMICE業界トップランナーでもある山本牧子さんにウィズコロナ/アフターコロナでニーズが高まるオープンエアのMICE利用や可能性について、弊社代表 藤田との対談形式でお話を伺いました。


〜設立経緯とバルコニスト協会とは?〜

 コロナ禍で社会全体に閉塞感や自粛疲れが漂い、またリモートワーク化したことで家の中で過ごす時間が増えお家時間の充実が求められるようになりました。バルコニーやベランダ等がある住居は多いものの、洗濯物を干すだけにしか利用していない場合が多くあります。一方、空前のアウトドアブームで海外を含め屋外利用の価値が上がっています。山本氏の場合には、自宅にバルコニーはありましたが、物置になっていた空間。朝、コーヒーを飲みながらふと外を眺めていた時に「ここは使えるのでは?」と思いついたことがきっかけで、人工芝や紫陽花、観葉植物を購入し、部屋からクッションを出して、夕方スパークリングワインを飲んだそうです。すると開放感があり、とても気持ち良かったとのこと。屋外テーブルやチェアを少しずつ整え、「バルコニスト・マッキー・サロン」として活用が始まりました。


 バルコニスト(Balconist = Balcony + ist)とは、外の世界と自分の部屋を結ぶ「バルコニー」をより快適な空間にし、自分らしく活用する人という意味の造語です。これまで外食をして情報交換やコミュニケーションを図っていたことがコロナ禍により制約が出てしまった。そこで自宅バルコニーに人を招くようになったら、皆さんが喜んでくれるため、価値があることなのだと感じたとのこと。その経験がきっかけとなり、「ライフスタイルの充実を図るため、テラスやお庭、縁側等を含めたオープンエアのエリアを活用することを社会に普及させる」「オープエリアの活用を通じて、新しい価値や有機的時間を共有する新しいライフスタイルの発見を目指す」「オープンエリアの活用を通じて、人と人の出会い、コミュニケーションの場を提供し交流を図る」ことを目的にバルコニスト協会を設立に至りました。
 逆境の中でも、ものの見方やマインドセットを変えるだけで、喜びや新しい価値観を発見できたり、発想を転換し自らを高めていくきっかけを作ります。人生100年時代に色々な人が集まり、価値観を共有することで豊かな人生を送ることを目指しています。
 MICEにも共通しますが、バルコニーに出てこれまでと違う使い方をする等、非日常空間を味わうことで、新しい風が吹き、閉塞感を打ち破ることができて、クリエイティブになったり新しい自分と出会うことができます。
 ニューヨークではバルコニーやテラス空間が評価され、オープンエアのエリアがある物件の価値が40%上がったり、ミラノでは60%上昇する等、世界的にもトレンドになっています。


〜バルコニストとMICEの接点〜

 都内のホテルでもオープンエアスペースがある施設が増えています。一例を挙げると、フォーシーズンズホテル東京大手町、東京エディション虎ノ門、THE AOYAMA GRAND HOTEL、アロフト東京銀座等があります。ホテル以外でもMiyashita park、Wild Magic等、人気も高まり、B2Bの世界でもオープンエアの活用はトレンドになっています。
 2019年パリに会議の視察に行った時には、コロナ前でしたがテラス席から埋まっていました。前職でもテラスでカクテルパーティーができないかとリクエストを受ける等、海外でのテラスの人気の高さを実感していました。それは、風を感じたり、香りを感じる等自然に触れられ、外の方がリラックスして会話が弾み、ネットワーキングがしやすいためだと思います。これまでは海外主催者のニーズに対応できる施設が少なかったものが、コロナ禍で日本もその環境に追いついてきたと言え、MICEにとっては良い傾向だと感じています。
 2019年に行われたアイランダーサミット石垣は、会場となったフサキリゾートに当時、宴会場がなく、ビーチ横の木陰にテントやターフを立てて会場としました。海風が吹き、リラックスした雰囲気もあって、議論が弾みました。

THE AOYAMA GRAND HOTELのルーフトップ。パーティー利用もできるとのこと
アロフト東京銀座のルーフトップ。スペースを上手く活用し、ゾーニングされています。夜はライトアップされ、違った雰囲気に。


〜これから求められるMICEのスタイル〜

 IACC2020 Reportでは「社会的責任と倫理に基づいた運営」が74%、「ミーティングスペースの柔軟性(家具の移動が可能かどうか等)」が72%、「料飲の提供(サービススタイル、プレゼンテーション、品質)」が72%といった会場が求められるという調査結果が出ています。また、社会的責任と倫理に基づいた運営を具体的に見ると、「食品廃棄物の管理能力」や「使い捨てプラスチック消費削減のプログラム」「全スタッフが参加する地域貢献活動」等が挙げられます。また、日本では難しいですが、「未使用の食品を地域社会に寄付する機能」があります。例えば、マリオットでは宴会の料理を急速冷凍して寄付しており、日本でも実施できれば良いと考えています。
 サステイナビリティ面では、2019年にパリで参加した会議ではペットボトルは一切提供がなく、マイボトルを持参すると水を提供するブースがあったり、ボトル等、容器の提供をしているブースもありました。今後、この傾向はより加速すると思います。
 企業もCorporate Citizenshipとして、全ての行動や手配にCSRやSDGsの意識を取り入れる思想を重視し、正しいことを行おうとする流れがあります。一例を挙げると、MICE開催の際に、参加者にSuicaを配布して公共交通機関で移動し、残ったチャージ分を寄付する、というものがあります。
 この他にも、体験を創り出す上で、オープンでフレキシブル、明るい、楽しそう、そしてテクノロジーの充実したクリエイティブなミーティング空間や屋外のミーティングスペースが求められています。日本の事例だと、沖縄のハレクラニは宴会場の外にテラスがあり陽が差し込んで明るく、プールの周りやレストラン横のテントが貸切利用できるようになっていました。また、仙台の国際会議場センターの駅上にある施設では、家具がフレキシブルに動かせ、ステージや照明が付いたオープンエアスペースがあり、奥には芝生、室内にも会議スペースがありました。
 食事面では健康志向になっていて、ある企業のランチイベントでは塩を使わない食事を提供しました。ランチは全てベジタリアンというコンファレンスもありました。ちょうどCOP26が開催されていますが、知識層を中心に、飼育時の二酸化炭素排出量の多い牛・豚を食べなくなる傾向も見られます。
 また、SBNR(Spiritual But Not Religious/無宗教型スピリチュアル層)もトレンドになっています。メディテーションをしている人も増えていますが、人事担当者が新入社員にアプリを渡し、ヨガやメディテーションでケアをする例もあります。アメリカだと5人に1人がSBNRで大卒の知識層に多くみられ、若者では83%を占めるというのも特徴です。MICE観点で見ると、巡礼や参拝等をネイチャーウォーキングの一環としてコンテンツに組み込む等、活用できるものが多くありそうです。

 全体を通し、オープンエアのMICE利用の可能性だけではなく、クリエイティビティや発想の転換を促すような工夫、自分がリラックスできる時間や考えを整理することができるような空間・ブレイクを考慮したプログラム作りも大切になるという、プランニング部分でも参考になる示唆に富んだお話でした。


日本バルコニスト協会:https://balconist.jp/

配信拠点: 銀座6丁目にある THE GREY ROOM https://thegreyroomtokyo.com/ にご協力いただき、11Fテラスよりお送りしました

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