以前よりオーバーツーリズムが世界中で課題となっていましたが、近年、イベントのサステイナブル運営や観光地におけるサステイナブルツーリズムに対するニーズがより高まっています。これはSDGsへの関心の高まりや、コロナ禍におけるウェルネス志向、より負荷が少ない選択をする消費行動等の複合的な要因によるものと考えられます。ここ2年程で各種MICE団体でもサステイナビリティに関するウェビナーや教育プログラムが増えており、日本のMICE関係者でこれらに参加している方も多数いらっしゃると思いますが、Cornell大学でもオンラインコースが開設される予定で日本でも受講が可能なため、以下ご紹介します。
Cornell大学はTravel Foundationと共同で、21世紀の観光経営に喫緊で求められる知識・スキルを提供するオンラインコースを開発しました。この40時間のコースは、将来の環境に優しく、より効率的で公平なデスティネーションの管理に必要な才能、能力、リーダーシップを育成する上でのギャップを浮き彫りにした、2019年発表のレポート「Destinations at Risk: The Invisible Burden of Tourism」の分析から生まれたものです。
「持続可能な観光デスティネーションマネジメント」コースは、2022年秋からeCornellにて提供され、インパクトマネジメント、気候変動対策の計画と資金調達、リスクプロファイル、コミュニティエンゲージメント等、市場で必要とされる多くの新しいスキルを身につけることができるプログラムです。
このプログラムは、Cornell SC Johnson College of Business Center for Sustainable Global Enterpriseの Sustainable Tourism Asset Management Program(STAMP)が、グローバルNGOのTravel Foundationと提携し、ドイツ連邦経済協力開発省(BMZ)を代表してドイツ国際協力銀行(GIZ)から資金援助を受けて開発されているものです。
国連世界観光機関(UNWTO)の支援により、経済的な理由で参加できない対象国から少なくとも1,000人の参加者に、プログラムへの無料参加権が与えられます。また、将来的には、グローバルパートナーとの連携により、さらに多くの奨学金を提供する予定です。
このオンラインプログラムでは、受賞歴のある教授陣や専門家等、気候変動やオーバーツーリズムなどの喫緊のテーマに関するデスティネーション・マネジメントの専門知識を世界中から集め、プロの現場で直接活用できるツールをダウンロードできるほか、最先端のデスティネーション・マネジメント問題に関するトップエキスパートのリサーチも提供されます。プログラムの内容は以下の通りです。
1. 世界の観光経済の概要とそれがもたらす価値
2. 観光の目に見えない負担・影響を測定する
3. 見えない負担を管理する
4. 気候の影響への対処
5. 主要な経済開発目標の定義と達成
6. 観光の共有資産の公平かつ包括的な管理
7. デスティネーション・マネジメントに特化した能力の開発
8. 持続可能なデスティネーション・マネジメントのツールやコンセプトを、観光セクターの重要な実例に適用
このプログラムは、国や地方自治体の観光担当者、DMO(Destination Marketing and Management Organisations)スタッフ、デスティネーションマネージメントに関連する公共・民間・非営利分野の関係者等、世界中の人々を対象に設計されています。
STAMPの主任講師兼マネージングディレクターであるMegan Epler Wood氏は、「我々の報告書『Invisible Burden』は、観光地が観光の成長と影響の両立にいかに苦労しているかを記録し、新しい技術スキル、知識、ツールの喫緊のニーズを明らかにしました」と述べています。「公共部門は、単に観光地を宣伝するのではなく、観光需要や観光地の資源を管理する必要性をますます認識するようになっていますが、それに対処できる知識や能力は組織内に殆ど存在しません。Cornellの持続可能な観光デスティネーションプログラムは、このギャップに対処し、この分野で専門的な開発を構築することを目的としています。
Travel FoundationのCEOであるJeremy Sampson氏は、次のように述べています。「このプログラムは、アイビーリーグのトップクラスの大学から提供され、デスティネーションをどのようにマネジメントするかを変える大きな可能性を持っています。Cornell大学との継続的な協働を嬉しく思いますし、私たちの経験やリソースをコース内容の一部として共有し、無料の奨学金制度によって、特に南半球の観光地にとって経済的なバリアを取り除くことができることを楽しみにしています。私たちの使命は、スチュワードシップを最も必要とする観光地を支援し、観光から十分な利益を得られるようにすることであり、このコースは私たちのアプローチに不可欠なものとなるでしょう。」
UNWTOのイノベーション・教育・投資担当ディレクター、Natalia Bayona氏は、「オンライン教育は、人々が学ぶ方法を拡大します。観光は若者の雇用者数でトップの産業です。それにもかかわらず、彼らの50%は中等教育しか受けていません。今日、私たちはこれまで以上に、優秀な人材がより良いキャリアを積み、観光業でプロフェッショナルな道を歩むために、イノベーションとサステイナビリティに満ちた付加価値のあるプログラムを必要としています。世界観光機関では、加盟国がこれを実現するための支援を積極的に行っています。
本オンラインプログラムを修了すると、コーネル大学から認定を受けることができます。
出典:MPI NEWS BRIEF March 28, 2022
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