<学士会館>食から広がるエシカル・SDGsへの取組み

 東京大学発祥の地に立つ学士会館では、2016年からオーガニックやフェアトレード認証製品等エシカルな食材の調達を進めています。これは、同館を会議利用した主催者から「人と社会、地球環境、地域に配慮したエシカルという考え方」についての理解を深めることを目的に、朝食を交えながら講演を聞き議論するイベント開催の相談を受け、「エシカルを考慮した食材」を使った朝食会メニューを提供する試みからスタートしました。

〜エシカルとは?〜

 エシカルとは英語で直訳すると「倫理的な」という意味です。自然環境を損なわず、資源の浪費をしていない、劣悪な環境や長時間労働を助長しない、そして地域社会や経済を損なわない製品やサービスの消費や購入を指します。
 私たちは日々消費をしながら生活をしています。衣食住に関わる消費でも、いつ、どこで、誰が、どのように作ったか、生産背景を知ることは大切です。フェアトレードという言葉を耳にした方は多いと思いますし、東日本大震災以降に震災のあった地域の商品を購入される方も増えていますが、生産者や地域の応援に繋がるものを購入し、環境負荷の低いものを選択することは、その行動自体が社会問題解決への貢献になるのです。
 日本のGDP(国内総生産)のうち、個人消費は約5割を占め(令和3年度版消費者白書)、私たちの消費が社会・経済に与える影響は小さくありません。人や社会・環境などに優しく、他者や地域社会・自然環境等を思いやる、そして地域や生産者の自立支援に繋がる選択が社会や未来を変える「チカラ」となります。

〜朝食会から広がるエシカル調達〜

 朝食会は2ヶ月に1度のペースで開催され、スタート直後は調達可能な食材にも限りがあり、メニュー考案にも苦慮されたとのことですが、毎回7〜8品のお料理が提供されていました。そして徐々に調達できる食材も増え、メニューのバリエーションも豊かになりました。当初は同館を会議利用した主催者からのリクエストで始まった取組みでしたが、今では1つのオプションとして同館が提案できるコンテンツにまで発展しました。

〜紐解けば、12年前から取組まれていたエシカル消費〜

 学士会館では、朝食会の依頼を受ける以前の12年前より総料理長の大坂 勝氏が日本全国の有機野菜生産者を応援するために「野菜の会」を毎月開催していました。有機で野菜を作るには非常に手間暇が掛かり、形が不揃いなものもあれば、化学肥料を使用した野菜と比較すると値が張る場合もあります。一方で農薬による環境へのダメージや生産者の健康被害もなく、味も良い。このように価格に反映される要素や生産の背景を知り、有機野菜を手に取る消費者が少しでも増えれば、という思いで自社イベントとして継続されています。この他にも、和菓子や陶芸等の伝統技術や文化継承、そして異文化との融合や調和を目的としたイベントや、「食とエコ」をテーマにしたイベントなども生産者や自然環境を考慮した食材を使い多数実施しています。また、定期的に子供食堂への無償協力も行っています。これらは、自社のSDGsの取組みとしてエシカルな調達を行うだけではなく、食材や生産者、匠との出会いを通してイベント参加者への啓蒙やエシカル消費体験の提供に繋がっています。
 国連が掲げるSDGsでいえば、
1.貧困をなくそう、 
7.エネルギーをみんなにそしてクリーン、
10.人や国の不平等をなくそう、
12.つくる責任つかう責任、
14.海の豊かさを守ろう、
15.陸の豊かさを守ろう、といった目標に関連している活動に、自然な流れで携わってきたと言えます。
 そんな活動履歴の一つとして、パーティー会場のテーブル装飾を大坂氏自らが収集した流木や石等を活用し、リサイクル活動に配慮を続けている実例があります。

〜スタッフに向けたSDGs教育〜

 自社スタッフには日々朝礼や食材の扱い、調理を通して学士会館でこのような取組みを継続する理由や技術・文化を伝承する必要性、生産背景の見極め、消費者の健康を守る使命等を伝え人材育成を行う他、生産者訪問を通じてSDGsへの理解や取組みを広げています。

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