<専門用語>GX グリーン・トランスフォーメーションとは ~世界中が取組みを加速させるグリーン戦略~

 グリーン・トンランスフォーメーション(Green Transformation: GX)とは、温室効果ガスを発生させない再生可能エネルギーに転換することで、産業構造や社会経済を変革し、成長につなげることです。
 2020年10月、日本政府は2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロとする「2050年カーボンニュートラル」を宣言しました。この宣言を機に、日本でもGXという言葉が注目され始めました。世界的には、2017年に2050年までのカーボンニュートラルを目指す「カーボンニュートラル連合(Carbon Neutrality Coalition)」が発足し、2021年4月15日時点で日本を含む29か国が署名しています。
Carbon Neutrality Coalition: https://carbon-neutrality.global

〜なぜカーボンニュートラルが必要?〜

 地球温暖化については毎日のように報道等で目にしますが、国連環境計画(UNEP)の「Emissions Gap Report 2020」によると、二酸化炭素など温室効果ガスの排出量が増え続ければ、「世界の平均気温は今世紀中に産業革命前と比較し3.2℃上昇すると予想され、気候面で広範囲な破壊的影響をもたらす」と指摘しています。世界の平均気温が3.2℃上昇すると、台風や豪雨、熱波などの自然災害が頻発し、大洪水や干ばつ、森林火災が全世界に及ぶ危険性があります。また、COVID-19の影響で旅行の減少や産業活動の低下、発電量の減少により2020年の二酸化炭素排出量は最大で7%減少すると予測する一方、この減少は2050年までに地球温暖化を0.01℃減少させるに過ぎず、気候変動への影響はごくわずかと報告しています。
 温暖化を止めるには、温暖化ガスの排出を減らす必要があり、世界的に2050年カーボンニュートラル実現に向け様々な政策が示されています。

〜日本のカーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略〜

 経済産業省は、2050年カーボンニュートラルを受けて、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を策定、14分野を成長が期待できる産業と位置付けています。
・洋上風力産業:風車本体・部品・浮体式風力
・燃料アンモニア産業:発電用バーナー(水素社会に向けた移行期の燃料)
・水素産業:発電タービン・水素還元製鉄・運搬船、水電解装置
・原子力産業:SMR(Small Modular Reactor:小型モジュール炉)・水素製造原子力
・自動車・蓄電池産業:EV(電気自動車)・FCV(燃料電池自動車)・次世代電池
・半導体・情報通信産業:データセンター・省エネ半導体(需要サイドの効率化)
・船舶産業:燃料電池船・EV(電動推進)船・ガス燃料船など
・物流・人流・土木インフラ産業:スマート交通・物流用ドローン・FC(燃料電池)建機
・食料・農林水産業:スマート農業・高層建築物木造化・ブルーカーボン(海洋生態系に吸収される炭素)
・航空機産業:ハイブリッド化・水素航空機
・カーボンリサイクル産業:二酸化炭素吸収コンクリート・バイオ燃料・プラスチック原料
・住宅・建築物産業/次世代型太陽光産業(ペロブスカイト)
・資源循環関連産業:バイオ素材・再生材・廃棄物発電
・ライフスタイル関連産業:地域の脱炭素化ビジネス
 そして、企業の現預金240兆を投資に向かわせ、3,000兆の世界のESG投資を日本に呼び込むとしています。

〜なぜ企業がGXに取組む必要があるのか?〜

 国土交通省は2019年の台風19号による被害額は約1兆8,600億円であったと報告しています。JR東日本・西日本では河川の氾濫で浸水した北陸新幹線10編成が廃車となり、それぞれ約118億円、30億円の損失額となりました。このように地球温暖化が与える経済損失は莫大な額に上っています。
 そして気候変動が企業経営に与える損失に危機感を抱いたのが金融機関です。そのため、世界最大の資産運用機関である米国ブラックロックは気候リスクへの強い懸念と投資先に対する気候変動対策・情報開示を求めています。現在、世界全体の投資額の3割程度、日本の運用資産全体でも約24%がESG投資となっており、今後、気候変動対策に取組まない企業は、世界市場において資金調達が困難になる恐れが出てきました。
 例えばアップルは自社のみならず、2030年までにサプライチェーンと全製品での100%カーボンニュートラルを目指しており、本田技研工業は2040年までにグローバル全体でガソリン車販売の取りやめ、EV車と燃料電池自動車への100%移行を公表しています。世界的な金融機関やグローバル企業がGXへの取組みを加速させる中、日本企業が対策をしなければ競争力の低下を招くことは明らかで、各社取組みを進めています。

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