先日よりお送りしている大阪・関西万博について、今回はサステイナビリティの先進地域である北欧5カ国(デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデン)が共同出展するパビリオン「ノルディック・サークル」を紹介いたします。「ノルディック・サークル」とは北欧5カ国の協力と持続可能な未来への願いを象徴する概念です。

建築と設計:地域資源と環境配慮の融合
黒を基調とした木造建築は、北欧らしいシンプルで温かみのあるデザインが特徴です。使用されている木材はすべて日本国内で調達されており、博覧会終了後には再利用される予定です。建物は自然換気を活用する設計となっており、空調使用を抑えることでエネルギー消費の削減を図っています。 パビリオンは、展示ホールを中心に、ショップ、レストラン・カフェ、会議室、イベントスペースなど多機能な構成で、来場者に多角的な体験を提供します。
展示ホール:五感で体験する北欧の暮らしと未来
展示ホールに入ると、円形の暗い空間が広がり、天井からは大小さまざまな紙が円を描くように吊るされています。これらはスクリーンとして機能し、北欧の人々の夏の暮らしを映し出しています。スクリーンに使用されているのは、食用に適さなくなった米を原料とするライスペーパーで、資源循環の思想が反映されています。
室温や香りも北欧の自然環境を再現しており、来場者は五感を通じて、北欧のライフスタイルを体感できます。

壁面には不規則な形状を組み合わせたモダンアート風のオブジェが配置され、360度のデジタルサイネージによって北欧が目指す持続可能な社会のビジョンが提示されています。主なテーマは以下の3つです:
- グリーントランジション&サーキュラーエコノミー(環境にやさしく、循環する経済)
再生可能エネルギーの活用や廃棄物の再資源化技術など、循環型社会の実現に向けた取組み - ライフスタイル&ウェルビーイング(暮らしと健康)
デザインとイノベーションを通じた暮らしの質の向上、心身の健康を重視した社会づくり - モビリティ&コネクティビティ(移動とデジタルのつながり)
スマートシティや都市設計におけるデジタル技術の活用による、持続可能な移動と情報の連携
各テーマは、シンプルかつ視覚的にわかりやすい映像で紹介されており、北欧の先進的な取組みを直感的に理解できる構成となっています。

レストラン・カフェ:食の体験から広がるサステイナビリティ
併設されたレストラン・カフェでは、北欧の食文化を通じてサステイナビリティを体感できます。入口にはメニュー看板があり、料理の写真とともに、内容や使用食材の詳細が日英表記で掲示されており、来場者が食の背景を理解しやすい工夫がされています。また、以下のような持続可能な取組みが実践されています:
- 食品廃棄ゼロの推進
食材のすべての部位を活用し、廃棄物の発生を最小限に抑えています - 地元および季節の食材の優先使用
輸送に伴うCO₂排出を削減するため、地域で調達された旬の食材を積極的に使用しています - 環境配慮型包装の採用
すべての包装材は、生分解性またはリサイクル可能な素材で構成され、環境負荷の低減に寄与しています - 再利用可能なカトラリーの使用
使い捨てを避け、持続可能な素材によるカトラリーを導入しています - ゴミの分別
ゴミ箱は、「かん・びん」、「ペットボトル」、「食べ残し」、「もえるゴミ」、「もえないゴミ」の5種類に分類されています。

この他にも、必要なカトラリーやおしぼりを自身で取りに行くスタイルの他、調味料類も小分けパックではなく、大きなボトルから必要なものを必要な量だけ取分けるようになっていました。こうしたちょっとした工夫でも廃棄物軽減に繋がります。


ノルディック・サークルは、北欧諸国が培ってきたサステイナビリティの思想と実践を、建築・展示・食の体験を通じて包括的に伝える場となっています。シンプルかつ機能的でありながら美しい北欧デザインの魅力が随所に表現されており、持続可能な未来へのヒントを与えてくれる空間です。
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