SAF(サフ)は、Sustainable Aviation Fuelの略で、石油から作られる燃料を植物や廃棄される食用油等から作られる代替燃料に置き換える動きが見られます。現在、全世界のCO2排出量のうち、航空輸送によるCO2排出量は全体の2〜3%であるものの、この15年ほどで航空由来のCO2排出量は約40%増えています。世界で航空輸送の温室効果ガス排出規制の強化が進み、国際民間航空機間(ICAO)は2021年以降の国際航空輸送におけるCO2排出量を2019年以下に抑える目標を掲げています。
SAFを導入することにより、製造段階も含めて従来のジェット燃料と比較しCO2を約80%削減できると言われており、ICAOのCO2排出量削減対策の中心もSAFの導入となっています。
〜ゴミから代替燃料を製造〜
一般的な代替燃料の生産は、食料油・廃棄油・使用済調理油脂等を脱酸素化し水素処理していますが、アメリカでは、需要増加に応えるために、「ゴミ」から代替燃料を作る動きが出ています。これは、ネバダ州に2021年に建設されたFulcrum BioEnergy社の代替燃料製造工場で、近隣の家庭ゴミから金属等を取り除き、紙屑や布、木材等を細かく切り圧縮、1400℃で気化処理してガスに変えます。ガス化の際にCO2を分離することで、CO2排出量が少ない燃料になるそうです。さらに有害物質を取り除き、液体の代替燃料にします。同社では、年間1100万ガロン(約4100万リットル)の代替燃料生産を計画しており、今後さらに大きな工場建設も計画しています。日本企業では、日本航空や丸紅が同社と燃料供給契約を締結しています。
ユナイテッド航空では2020年に購入した代替燃料は燃料全体の1%未満でしたが、Fulcrum BioEnergy社に出資し、購入量を増加、2030年までに10%に引き上げることを目指しています。
〜普及に向けた仕組み〜
代替燃料はジェット燃料と比べ、価格が数倍割高であることが課題の1つとして挙げられています。導入コストは航空会社の企業努力だけでは対応が難しい状況です。そこで始まったのが、顧客企業に出張や貨物輸送に代替燃料の航空便を利用してもらい、航空会社は追加料金を受け取る一方、温室効果ガスの排出量が減った分を排出量削減枠として顧客に提供する仕組みです。世界各国の大手企業からの賛同を得ており、航空業界の利用を含めて投資することで、より早く代替燃料の普及・業界育成の動きが見られます。
〜取組みが進まないデメリット〜
日本においてSAFの取組みが進まない場合、GX(グリーントランスフォーメーション)の解説記事でも触れましたが、ESG投資が促進されるにつれ資金調達のリスクも出てきますし、SAF使用の義務づけを検討する国もあり、将来的にSAF導入をしていない航空機の乗入れができない国が出てくる可能性があります。また、CO2削減義務を課されている航空会社は日本でSAFの調達ができなければ、復路の燃料が確保できずに乗入れができなくなります。
〜加速するSAF調達〜
2050年までにCO2排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルの達成を共通目標として掲げる、日本航空等9社が加盟するワンワード・アライアンスは、2021年11月末にサンフランシスコ国際空港発の便でSAFを導入することを発表しています。2024年から7年間で米Aemetis社より130万キロリットルを調達する計画です。
KLMオランダ航空では数社のパートナーと共に自社のSAFを専門に製造する工場建設を計画しており、2023年の操業開始が予定されています。ボーイング社では2030年までに混合率100%のSAFで飛行可能な機体の開発を目指しています。
日本でも経済産業省が2021年6月に国産のSAFを従来のジェット燃料に混合し、JAL、ANAの定期便によるフライトを実施する等、SAF導入に向けた準備が進んでいます。国産のSAF製造にあたり、十分な供給量の確保、低コスト化(2030年頃には100円台/Lまで低減することを目標)、製造過程を含めライフサイクルの視点からみた十分なCO2削減率を実現するSAF開発、品質検査の実施、サプライチェーンの確立等検討課題はありますが、世界各国で投資や取組みが加速する中、日本の対応推進にも期待されます。
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